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珈琲大雅

珈琲の多様性。

インスタントなひともいれば、ハンドドリップ、フレンチプレス、など、そのひと“ならでは”の淹れ方。シロップやミルクを入れる量でもさまざまな味わいがある。飲むシーンも多種多様で、朝はパンとともに。オンとオフの切り替えに。煙草と。はたまた本や映画とともにゆっくりと。珈琲を飲む時間は、それぞれの価値観がある。そう考えると、珈琲ほど選択肢が多い飲みものはないかもしれない。そしてそれは人生に少しの豊かさをもたらせてくれる。

鶴橋と玉造の中間の住宅街に位置する『珈琲大雅』は、珈琲と向き合う贅沢な時間を提供。大きな窓から降り注ぐ陽が、珈琲を、そして飲むひとを美しく照らす。

潔く横に並ぶベンチ。自家焙煎の豆の香ばしい香りとともに、ゆっくりと珈琲を味わえる

  • 時間をかけてゆっくりと抽出する深煎り。出来上がりを待っている時間も楽しい

月替わりのパッケージは、見藤さん自らが描く。月替わりの豆のパック100g ¥900〜。オンラインストアでも購入できる

アメリカ・サウスカリフォルニアのバンダナメーカー《HAVE-A-HANK》のバンダナに、手書きのペイズリーとコーヒー豆のプリントを施したオリジナルバンダナ ¥2,500

深い味。深い時間。

元々飲食とは無縁の職種で勤めていた店主の見藤大雅さんは、大阪のとある名店で飲んだ深煎りの珈琲に衝撃を受けたと言う。「もちろん元々コーヒーが好きでしたが、いままで口にしてきた珈琲に、こんな世界があったのか、と感銘を受けて。それがターニングポイントとなり珈琲の研究に明け暮れました」。これまでの人生から一転。満を辞して2023年にオープンした珈琲大雅は、毎朝自家焙煎する豆を使い、雑味が一切ない深煎りの珈琲を提供。そして、珈琲と抜群のコンビネーションをみせる厚みのあるシュガードーナツが華を添える。その味を求めに、珈琲好きはもちろん近所の中学生など、老若男女が訪れる町の喫茶店だ。深煎りの珈琲を提供するお店は、どこか薄暗くてクラシックな雰囲気を想像するが、見藤さんは無機質でモダンに表現した。そしてそれは2Fのギャラリースペースがアンサンブルに。「お店で使っているカップの作家さんの個展や、器作りのワークショップなどを開催しています。珈琲だけでなく、物作りやアートを楽しめる空間にしたくて」(見藤さん)。

珈琲からはじまるコミュニケーション。その時間を味わい楽しむことが、町の喫茶店のあるべき姿なのかもしれない。

深煎りの心地よい苦味を引き立てるドーナツの組み合わせ。珈琲 ¥550、シュガードーナツ ¥350

  • 2Fのギャラリースペースでは、不定期で陶芸作家の個展やアート展が開催される

  • アートボードとして機能する窓の一面は、お店をきっかけに繋がった様々なアーティストの作品が表現される場に

Photo / Shimpei Hanawa

Text & Edit / Masashi Katsuma

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