Feature 9

MY HOME TOWN

VOL.03
田村圭介(VILL|a small place)が案内。
新旧が混ざり合う“元町〜神戸駅間”。

  • Update :

    Apr 10, 2024

街から港方面へ、
元町以西を巡る。

私たちがいま知りたい街を、その街の人にガイドしてもらう連載企画『MY HOME TOWN』。

 

第3回目は、神戸。この関西を代表する都市において、今回は知る人ぞ知るお店が点在している元町の西側エリアに注目しました。

 

ナビゲーターは20数年の長きに渡り神戸に根を下ろし、2021年に南京町で小さなギャラリー『VILL|a small place』をスタートした田村圭介さん。「出身は徳島なんですが、前職時代から長く住んでいることもあって、神戸は非常に馴染み深い街。昔からのセレクトショップや飲食店、そして中華街を連想されがちな元町は、スケーターたちが作ったショップ兼ギャラリーが出来たりと新しいウネリもあります。ここ南京町に小さなギャラリーを構えたのも、そんな居心地の良さと、新しい動きとのバランスに魅力を感じたからですね」と田村さん。元町・中華街の端から神戸駅周辺までのんびり歩くこと約30分。古くから四姉妹が営む喫茶店に、老舗の玉子焼き、ヴィンテージにめっぽう強い新店など、どちらも個性派揃いのエリアです。

NAVIGATOR

VILL|a small place
田村圭介さん

前職のBEAMSでは、グラフィックやデザイン、アートを洋服で体現する〈BEAMS T〉を担当。退社後、地元である徳島に戻り、家業のいちご農家を継ぐ。現在は遊休資産活用やアートプロジェクトの企画の傍ら、神戸・南京町で小さな展示室『VILL|a small place』を運営。

1. VILL|a small place

南京町の雑踏に潜む
小さな展示室

今回のナビゲーター、田村さんが運営する展示室『VILL|a small place』は、観光客で賑わう南京町の最南端の雑居ビルにひっそりと佇んでいる。「芸術教育を受けていないけれど、現代アートの文脈で解釈できる作品を作っている、一般的なギャラリーで展示していないアーティストたちと実際に会える場所というのが神戸にはあまり無くて。長年神戸にいて、アートに近い場所にいたからこそ、ひとが集まるきっかけとなる場所を作りたかったんです。大きいスペースではできないこと。逆に言えばこれくらいの小さなスペースだからこそできること。前職時代を含めこれまで出会ってきたひとや、そこから繋がったアーティストの展示を主に開催しています」。エキシビションはスローペースに不定期開催ながらも、過去には大阪のグラフィティライターのVERYONE氏、コラージュアーティストのasota氏、今回のMY HOME TOWNでご紹介する『studio kushikatsu』のRay氏など、スケーター勢を筆頭にストリートに根付くアーティストを紹介してきた。この無限の可能性を秘めた小さな空間から、まだ見ぬアート・カルチャーが発信されていく。

  • VILLを訪れたアーティストたちが置いていったステッカー

  • アーティストでもあるコレクターの友人から譲り受けたナショナルのラジカセ。展示中の音を担う大事な存在だ

  • 近所の角打ちでグラフィティライターと開けたキープボトル

過去に展示したアーティストたちがイラストを描いた壁面

VILL|a small place

神戸市中央区栄町通1-2-11 福岡ビル3F

TEL : 未設

OPEN : 展示により異なる

HOLIDAY : 展示により異なる

INSTAGRAM : @villasmallplace

2. FILTER

クオリティと物量に驚愕する
ヴィンテージの数々。

「2022年にオープンした古着屋で、すごいヴィンテージのラインナップ。まるで時代と逆行しているかのようなアイテムセレクトだけど、“THE古着屋”な感じはなくて、店内はとてもクリーンなんですよ」と田村さん。元々ヴィンテージを蒐集していた店主・嶋田さんが40歳で脱サラしスタートした『FILTER』は、希少価値が上がり続けているリーバイスのXXに1st、’40s〜’50sのカバーオールが大量にラックにかかっていたり、と特にデニム類に圧倒的な自信を誇る。またオールドのティファニーをはじめとしたシルバージュエリーも多数。ヴィンテージのほか、神戸のビスポークシューズメーカー〈SPIGOLA〉や、同じく神戸のシューズブランド〈NORIEI〉、〈SOAK IN WATER〉のレザーベルトなど、ヴィンテージとも抜群の相性をみせてくれるセレクトブランドも少数展開している。大人の服好きにこそバチっとハマる、魅惑のラインナップだ。

  • ズラっと並べられたカバーオールは、40〜50年代の希少なものがメイン

  • ワーク・ミリタリーのアメリカ古着のほか、デザイナーズのUSEDも。2000年代初頭のコム デ ギャルソンのスウェット(Sold)

  • 70〜90年代の〈TIFFANY〉のキーリング。ほか、リングやブレスなども不定期で入荷する

  • 神戸拠点のベルト専科〈SOAK IN WATER〉。国内外の厳選した素材を用い、すべてハンドメイドされる

  • ヴィンテージ生地をアソートで使用した〈H.TOYS.Co〉のテディベア。レザーのほか、ヴィンテージデニムを使用したモデルも

  • 〈SPIGOLA〉のレッジェーラ¥96,800。スリッポンタイプでビブラムソールを使用。マッケイ製法によりとても軽い履き心地に

FILTER

神戸市中央区元町通 7-3-10 元町通ビル1F

TEL : 未設

OPEN : 12:00-18:00

HOLIDAY : 水曜+不定休

INSTAGRAM : @filterkobe

3. 山田製玉部

みんなを笑顔にする
神戸っ子自慢の玉子焼き。

「玉子焼きといえば、ここ。この味が恋しくて神戸を離れられないひとは数知れず。現社長の山田勝宏さんはアパレル人との繋がりも深く、玉子焼き屋に留まらない動きをしているのもおもしろいですね」と、田村さんも改めて注目している山田製玉部。1952年に創業、玉子焼きを作り続けて70余年を迎えたこちらは、老若男女問わず長く愛されている神戸メイドの代表的存在だ。ほんのりした甘みがウリの名物 本玉(厚焼き玉子)、京風 だし巻き玉子、正月には欠かせない伊達巻。これらは1Fの直売店で気軽に購入でき、その味を口にするのが神戸のひとたちの日常の光景だ。3代目となる山田勝宏さんが2021年に代表に就任してからは、老舗の味を守るだけでなく“攻め”の姿勢も。まずはコロナ禍にオンライン販売をスタート。さらに、本社の真裏にあるアイドルが手掛けるブランド「NARUHESON;S」とのコラボレーションに加え、昨夏に開催された野外イベントの目玉アイテムとして、大阪・新世界発の〈BOKU HA TANOSII〉に別注した“玉子焼きカラー”のTシャツ〈BOKU HA OISII〉も展開するなど、伝統深き玉子焼きの世界に山田さんならではの息吹を宿している。

  • 時代とともに機械化が進むなか手作業の行程も。熟練した職人の技や感覚を大事にしている

アイドルのusabeni(宇佐蔵べに)さんが手掛けるブランド〈NARUHESON;S〉とコラボレーションした、その名も〈YAMAHESON;S〉(ヤマヘソンズ)

山田製玉部が運営する隣の喫茶店「ふるもと珈琲店」では、厚焼き玉子を使ったサンドイッチを味わえる ¥800

  • コム デ ギャルソンを愛する「ふるもと珈琲店」マスターの大野さん

山田製玉部

神戸市中央区多聞通4-4-13

TEL : 078-341-8476

OPEN : 10:00-16:30

HOLIDAY : 木曜・日曜

INSTAGRAM : @yamada_seigyokubu

4. 喫茶 思いつき

仲良し姉妹が営む
和みの喫茶店。

「神戸が“港町”と呼ばれる所以の、造船所など工業地帯にある古い喫茶店。僕からしたら“おばあちゃん”くらいの4姉妹で営業していて、いい意味でいつ訪れても一緒。東京からのゲストを連れて行くととても喜んでもらえる場所なんです」と紹介してくれた、兵庫港にある創業60年を超える『喫茶思いつき』。とても仲良しの4姉妹が営んでおり、引き戸を開けると「こんにちは。いらっしゃい」と、まるで自分のおばあちゃんの家に遊びに行ったときのように快く迎えてくれる。店名の由来を聞くと「母親が思いつきではじめたからなのよ」とにっこり。船大工が手がけたレトロな茶色の内装。フルーツジュースやアイスコーヒー、トーストなど昔ながらのメニュー。初めて訪れたひとを記念撮影し、その場でプリントしてプレゼントしてくれるなど、その温かさは昭和から幾年経っても変わらない。そして、その居心地のよさから県外から訪れる常連も多数いるほど。心に届く真のホスピタリティに触れられる喫茶店だ。

  • 「どこから来たの?」「どんなお仕事をしているの?」と、四姉妹の下から2番目の紀久恵さんをはじめ、とても優しく会話を楽しんでくれるのが『思いつき』の魅力だ

  • 半分にシュガーを。もう半分にりんごジャムを乗せたトースト¥200と、特に女性に人気のフルーツジュース¥600

  • ほんのりと心地よい苦味のあるアイスオーレ ¥450。昔から愛される定番メニューのひとつ

喫茶 思いつき

神戸市兵庫区西出町1-2-18

TEL : 078-671-4652

OPEN : 10:30-15:00

HOLIDAY : 土曜・日曜+不定休

 

5. studio kushikatsu

神戸とインターナショナルを融合した
スケートとアートの蜜月。

「メルボルン、LA、ニューヨークなど、それぞれが神戸と海外のストリートカルチャーを体感してきたスケーターからなる“kushikatsu”クルーが創ったショップ&プロジェクトスペース。先述したとおり、僕の展示室でメンバーのRayに個展をしてもらったこともあり、彼らの動向に注目しています」。神戸にゆかりがあるメンバーを中心に、インターナショナルなカルチャーをもつスケーターたちの拠点が神戸に誕生したとあって、オープン前から楽しみにしていたという田村さん。2013年に6名の少年たちで結成された“kushikatsu”クルー。それから10年の時を経て大人になり、2023年に念願のオープンを果たした『studio kushikatsu』は、スケートギアとアパレルを展開するオリジナルの〈lola’s hard ware〉を筆頭とするウェア&グッズのほか、彼らの頭のなかを具現化したエキシビションを精力的に開催するなど、神戸のスケート・アートシーンにおいて早くも異彩を放っている。

  • 〈have a good time〉とコラボレーションしたロゴTシャツ¥9,900

  • ボルト&ナットをセットにした〈lola’s hardware〉の7/8″ INCH PHILLIPS HARDWARE 各¥770

studio kushikatsu

神戸市中央区海岸通4-3-17 清和ビル2階26号

TEL : 未設

OPEN : 13:00-19:00

HOLIDAY : 月・火曜

INSTAGRAM : @studio_kushikatsu

6. PUB KENNETH

ノーザンソウルを愛する
元町のイギリスパブ。

「入口は違いますが、VILLと同じビルにある『PUB KENNETH』。ノーザン・ソウルマスターとして知られているオーナーのお店で、’60〜70sの音楽が流れるなかお酒を楽しめるんです。氷を使わない、神戸ハイボールをときどき飲みに行きますね」と、元町のシメにおすすめしてくれた田村さん。イギリス北部発祥のダンスミュージックカルチャー、ノーザン・ソウルに魅せられたマスターの北秋さんは、今年で30周年を迎えるノーザン・ソウルの名物パーティー「NUDE RESTAURANT」を主宰。そして店名のKENNETHは、スコットランド出身のディープファンクマスター ケブダージの本名“”Kenneth James Darge”からとった。そんな、イギリスカルチャーの一端を凝縮した店内で飲むお酒は格別以外のなにものでもない。本場さながらのフィッシュ&チップスとともに、ひとりで、そして仲間とキンキンに冷えた神戸ハイボールを愉しみたい。

  • 凍らせたグラスにノンアイスでウイスキーを注ぎ、ソーダで割ったケネスハイボール¥750

パブと言えばのフィッシュ&チップス¥900。モルトビネガーをふりかけ、ハイボールとともに味わう時間は至福のひとときだ

今年で30周年を迎えるパーティー「NUDE RESTAURANT」。本場イギリスのDJもゲストで登場するなど、ノーザンソウルファンにとっては欠かせないイベントとなっている

PUB KENNETH

神戸市中央区栄町通1-2-11 福岡ビル2F

TEL : 078-321-3960

OPEN : 17:00-翌1:00

HOLIDAY : 火曜

山と海に恵まれる神戸の街。古くから港町として知られ、かつてはお洒落の街とも呼ばれた。だが、いまやそんな定型文では形容できない街の様子が元町より西側にある。心地よい陽気に時間をかけて歩けば、残しておきたいスポットを想い、新しいドアを見つけることができた。変わらない神戸と、変わって行く神戸。この街の温かさと未来の片鱗が垣間見えた気がする。

Photo / Shimpei Hanawa 

Text & Edit / Masashi Katsuma

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