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山粋

不便という豊かさを心から愛そう。

自然は、耳で感じるものかもしれない。店名のとおり山の中の奥地にあるこの場所へ、たどり着いてまず出迎えてくれたのが、風のざわめきと竹がぶつかり合う圧倒的な音。某セレクトショップで長年勤めた香月さん夫妻がオープンしてもうすぐ2年。「うつわとコーヒーの店」とは言うけれど、このお店が何よりも重きを置いているのが自然ということを、山の音が教えてくれている。

 

もともとアウトドアやキャンプが大好きだった香月さん。「自然の中に人が集まる場所を作りたかった」と話すように、このお店の2番目に大きいのは中庭が望めるカフェスペース。広々とした空間で自家焙煎のコーヒーや軽食を味わいながら憩える。

  • 本日のコーヒー¥550は濃厚で後味すっきり。豊能町高山地区の湧き水を使用している

  • ハードトーストの食感とソースの旨味がクセになる、きのこのクロックムッシュ¥700

四季折々の景観を楽しみながら飲むコーヒーは格別。春には満開の桜が目前に広がるそう

自然を感じる一品を。

世界の民芸品や日本全国から集めたうつわのセレクトも人気の理由で、その制作工程や環境はもちろん、たくましさや繊細さ、柔らかさなど、まさに自然のようにさまざまな表情を見せてくれる。どこか素朴で、触っていたくなる温かさが魅力だ。冬場には香月さん自ら薪を割り、ストーブにくべる。この繰り返しだというが、とても楽しそうに見えるのは、自然がもたらす豊かさなのかもしれない。

  • 中田窯(愛媛)の伝統的な砥部焼をポップに仕上げたリム皿¥4,180。春夏の食卓にも

  • 女性の作り手がつくる力強さと美しさが光る一枚。野はら屋(鹿児島)の皿¥3,850

  • 山の中で暮らし、工房を構える舟木窯(山口)の印判皿¥4,000。模様に素朴さがある

  • やちむんらしい風合いと独特の優しげな表情が特徴。からや窯(沖縄)の皿¥4,950

Text : Mio Wajima

Photo & Edit : Yuji Iwai

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