朝8時からオープンしているレストランがある。しかも、レバノン料理だという。聞き慣れぬファラフェルなるものや真っ黒のピタパン…。聞いても見ても、不思議ばかり。席に着いて口にすると、天窓からの明るい光にすべてのハテナがまるく包まれて、すとんと落ちるものがあった。
ひよこ豆で作る香ばしいファラフェルやシャワルマ(お肉の串焼きをマリネにしたもの)、スパイスの効いたフムス(ペースト)、フレッシュなハーブ、マリネ…。多彩な味と食感を、ピタパンの袋に好きに詰め込んで一緒に食べると、なんとも幸せな調和が生まれる。いろんな宗教の人、ベジタリアンやビーガン、食の意識が違うみんなが、同じひとつのテーブルで食事をする。それがレバノン料理だという。ここ〈汽〉にも、テーブルはひとつしかない。
「ビーガンやベジタリアンの人とお肉を食べたい人が食事をするとき、多くの場合がどちらかが我慢しなければいけない。そういうのがなく、どの人も一緒に気兼ねなく食事ができる。そういうカルチャーを作りたいと思いました」。と、オーナーシェフの長野さん。16歳からフレンチの世界で経験を積んできたとあって、洗練された見た目と味わいも、人気の理由だ。