Feature 9

Welcome Back
to IMA:ZINE Phil

dertbagのPhilip Post。2度目の来日の足跡。

  • Update :

    Mar 9, 2023

昨年秋に5周年を迎えたIMA:ZINEにとって、2022年最大のハイライトであったPhilip Postの来日。27歳の彼は<DERTBAG>というブランドの主宰であり、過去には世界のファッションシーンを席巻したシューズブランドのクリエイティブディレクターでもあった人物である。唯一無二のクリエイションを導き出すフィリップの2019年7月以来、約3年ぶりとなる来日。大阪と東京でのポップアップのためだ。

 

大阪では、IMA:ZINEの5周年に合わせ、彼のアートワークを象徴するコネクトロゴを落とし込んだコレクションを展開。フィーリングと感情を大事にクリエイションしたプロダクトやヴィンテージを使用したアトリエコレクションに加え、シルクスクリーンのワークショップやペインティングのショーケースもあったりと、3日間に渡りIMA:ZINEの2Fが彼のアトリエのような空間となった。

PHILIPとTANYの出会い。

〈dertbag〉をスタートしたのは、彼が13歳のころまで遡る。

服作りを始めたきっかけ、そしてIMA:ZINEディレクターTANYとの出会いについて。

 

PHILIP : 「ファレル(ウィリアムズ)やカニエ・ウエスト、日本のNIGOをよくチェックしていたんだけど、やはり彼らが作るプロダクトは当時の僕にとっては手が届かないからね(笑)。それもあるけど、誰も着ていないものを作ろうと思ったから。だから、すごくシンプルだよ。自分のエナジーとイマジネーションを洋服で表現しようと思ったんだ。12歳のときに、持っていたTシャツにシルクスクリーン(プリント)したり、Photoshopを使ってロゴを作ったりしてて、その頃は服作りというか、自分の存在をなにかで表現したかった。それが<dertbag>の始まりだね。それから、16歳で本格的にコレクションをスタートして、18歳のときにコネチカットに自分のお店を作った。いろんなひとの気分が良くなって、そのひとをカッコよく見せてくれるもの。そういった考えとフィーリングで物作りをしているよ。ブランド名の<dertbag>は、“Divine energy radiates through beauty and genius”の頭文字で、僕の哲学みたいなもの。服に限らず、アートや音楽といった僕のプロジェクトの総称だね」

 

TANY : 「彼の存在を知ったのは、世田谷のショップ『MIN-NANO』のブログ。実際に彼の物作りを見たのは、前職のビームス時代に訪れたNYの『THE GOOD COMPANY』で。その時の印象はファッションブランドというよりも、アートを見ているかのような不思議な感覚だったのを覚えていますね。実際に彼と会ってみたい、というか「会わなきゃ」と思って。IMA:ZINEがオープンしてしばらくしたあと、アメリカに行ったときに彼が住むコネチカットのブリッジポートのアトリエに尋ねたのが最初の出会いですね」

 

PHILIP : 「そう、TANYがわざわざブリッジポートまで来てくれて、dertbagへの想いを伝えてくれたのがとても嬉しかったよ。TANYはとてもカッコいいし、僕と好きなテイストが似ていて、すごくフィーリングがマッチした。ファッションはもちろん、音楽やアートでもね。だからお互いをより理解し合えたんだ」

大阪はすごくアットホーム。

2017年より親交を深めた2人。2019年夏には、アーティストのverdy氏とTANYが手掛ける〈Zepanese Club〉とコラボレーションしたカプセルコレクションが展開された。あれから3年。フィリップ自身それ以来となる日本であり、大阪である。

 

PHILIP : 「前回初めて大阪に来たときにも思ったことなんだけど、すごくアットホームだね。前は、IMA:ZINEの仲間たちと屋台に行った。鉄板でたこ焼きを焼かせてもらったしね(笑)。大阪はカッコよくなろうとしすぎていないひとが多いと思う。僕はそんなフィーリングが好きなんだ。特に都会から少し離れている『IMA:ZINE』の周辺はとても静かで、コネチカットの僕の地元みたいだよ。僕はファッションに興味のないひとからインスピレーションを得たりするので、この大阪、中津を歩いているひとを見るのがとても好きだね。美味しいバターチキンカレーのお店もすぐそばにあるし、そこには毎日行ったよ(笑)。そして、なによりIMA:ZINEはスーパークール。VerdyとTANYの<Zepanese Club>はもちろん、すべてのセクションが素晴らしいし、これまで見たことのないレイアウトでファッションを表現している。外観も内観も、この建物自体も古くて美しい。そんな大阪も好きだし、東京も好きだよ。大阪にはTANYが、東京には『MIN-NANO』のGoroさんがいるからね」

 

TANY : 「2019年のIMA:ZINEでのポップアップ後も頻繁に連絡を取り合っていて、また彼となにかできればと思っていました。そんななか、世界中でパンデミックが起こってしまって。ちょうど落ち着いたのが、IMA:ZINEの5周年という非常に良い節目だったので彼に大阪にきてもらえないか? と伝えたら、喜んで来てくれることになった。彼の来日は本来9月だったんですが、ビザの問題で急遽キャンセルせざるをえなくなってしまって。ただ、転んでもタダで済まさないのが僕の性格(笑)。仕切り直しという意味もあるけど、何かもっと面白いことができないかと思い『MIN-NANO』のGoroさんと連絡を取り合って。どうせやるなら、今回はIMA:ZINEとMIN-NANOを繋いだら面白いんじゃないかと。それが、今回の大阪・東京のポップアップツアーですね」

フィリップが今回の来日のために描いた、MIN-NANOとIMA:ZINE、そしてdertbagのコネクトロゴ。

コネクトロゴのパワー。

今回のポップアップで展開した、彼のアートワークを象徴するコネクトロゴを落とし込んだカプセルコレクション。このコネクトロゴは彼が15歳のときに作ったものだという。

 

PHILIP : 「これはひとつの線で出来ている。とてもシンプルに人と人との繋がりを表現していて、タイムレスでありたいし、クラシックでいたい。コネクトロゴがきっかけで色々な繋がりに発展してほしい。このロゴにはそんな力があると信じているよ。今回のために、IMA:ZINEとMIN-NANOバージョンで作ったんだ」

 

TANY : 「コネクトロゴは、例えば〈Stussy〉のように誰がみてもかっこいいと思ったり、年月を重ねるにつれてかっこいいと認知されていくこと。それを知って人が繋がっていくこと、コネクションを持つこと。そういった、ロゴが持っているパワーを感じますよね。僕は、大阪、IMA:ZINEから誰をどんな風に繋げていけるのか、が自分の役目だと思っています。彼との初めてのコラボレーションは、2019年の〈Zepanese Club〉とのコネクトと発信でした。今回のポップアップも、このロゴからヒントを得て一本の長いロープを使うことで、コネクト(繋がり)を表現して。フィリップの来日のおかげでMIN-NANOのGoroさんと出会い、Goroさんと自分のマインド、MIN-NANOとIMA:ZINEのマインドがまた違う人にコネクトできるということ。そして今回は、アメリカ人の彼にとって初めて目にするであろう、日本のカルチャーである“達磨”ともコネクトしました。dertbagを知らない人でも、このアートを見て「これ何?」と1人でも好きと思ってもらえると、それもコネクトとなります。その達磨も、福岡の郷土玩具のお店『山響屋』さんに真っ白なものを用意してもらった。それにフィリップのペイントをプラスしたことで、たぶん誰も想像がつかない繋がり=コネクトになったと思います。〈Stussy〉もラッパーやサーファー、スケーターたちとコネクトして認知度も上がったように、彼のロゴにも同じことが言えると思いますね」

 

PHILIP : 「そう、達磨は初めて見たよ。本来は眼を入れると聞いたんだけど、僕はあえて眼を隠してペイントしたんだ。カラーは完全にフィーリングで、インクが角立つようにペイントすることで、テクスチャーを強調している。僕のアートは、実際に触れてテクスチャーを感じてもらいたいんだ。実験的であり、新鮮に感じてもらえることが大好きだからね。まったく新しい価値観であったり、スタイルを感じることは、どんなことにも言えるけどとても大切だと思う。TANYは、こんな達磨みたことない、って言ってくれたよ」

 

TANY : 「日本人が思う先入観のある達磨ではなく、彼のアートワークの特徴である「color and texture」が表現されていて。日本人とは違う感覚で、偶然にして生まれた色の雰囲気やテクスチャーに彼の考えや熱意、想いが宿っている。達磨を通して、彼の哲学を感じさせる、非常に意味深い作品ですね」

大阪と東京それぞれで展開されたのは、スウェットフーディー、パンツ、ビーニーの3点がメイン。カラーリングは、IMA:ZINEがピンク、MIN-NANOはグリーンを落とし込んだ。

 

PHILIP : 「プリントは単なるドットに見えるかもしれないけど、実は点字で“dertbag”になっていて。分かりやすいアルファベットではなく、もっとほかのユニバーサルなものをファッションに落とし込みたい、という考えから生まれたものだね。これは2014年から使っているよ。点字は世界共通言語。日本でもアメリカでもどこでも同じものが使われている。点字を知らないひとには新しい言語となり、知っているひとは読むことができる。だだのデザインではないところに面白さがあると思っているんだ」

  • IMA:ZINEの5周年のためにサプライズで製作してくれていたTシャツ。

  • ヴィンテージウエアに、フィリップが手を加えたアトリエコレクションの一部。シンプルに、ときには大胆に、古着を新しい価値観へと進化させる。

彼のプロダクトは通常のコレクションのほか、アトリエラインと呼ばれるヴィンテージウェアを用いたコレクションも展開される。USEDはフィリップ自身が買い付けたもの。自らの手でプリントや刺繍などを用い、一点一点に新たな息吹を吹き込む。

 

PHILIP : 「僕の表現のなかで古着は欠かせない。お気に入りを見つけたときの感覚。たぶんみんな分かってくれると思うけど、あの感覚が好きなんだ。僕が使う古着は、古いものだと60年代から、比較的新しいものだと90年代のアメリカ製のヴィンテージウエア。そのほとんどはコネチカットで調達しているよ。古着の一番いいところは何も考えなくていいってこと。ワーク物の汚れた感じも好きだし、ユニークなグラフィック物も好きだし。すごくシンプルな手法ではあるけれど、古着に新しい魂や命を吹き込むのが大好きなんだ」

 

TANY : 「彼は古着のセレクトが絶妙で。ただ単に古着をピックアップしているのではなく、着る人の可能性を広げてくれるようなセレクトをしている。それらに、dertbagのロゴを刺繍したりプリントしたり、あるいは染めることで、まったく新しいものに生まれ変わらせる。ただ単に“乗せた”だけではない、彼の考えやセンスみたいなものが感じられると思います」

 

 

クリエイションし続けること。

フィリップは真剣に、ときにははにかみながら答えてくれた。

その純粋な眼の奥の確固たる信念は無限の可能性を秘めている。

 

最後に、彼が描く今後のビジョンを聞いてみた。

 

PHILIP「僕はアーティストとして、人として成長し続けていたい。もっといい作品を作りたい。そうするには新しいことに挑戦して、僕にしかできないことを作り続けなければならない。服を作るだけでなく、絵を描いたり、音楽も。そして、自分が表現していることをもっと知ってもらいたい。幸せなことに、Tanyをはじめ天才的なひとたちと働くことができてすごく恵まれていると思うよ。最終的には、自分のマインドがいろんなひとに届くことで、世界をよりいいものしたいと思っている。国籍や年齢、性別関係なく、僕が作った服やアートに触れることで、心地よさや楽しさを感じてもらうことができたらうれしいよ」

Photo / Yuji Iwai

Interview / Masashi Katsuma

Interpretation / Mami Tamada

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