Feature
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The nonnative Shop
Opened in OSK
nonnativeと大阪。
大阪と藤井隆行。
ワーク、ミリタリー、アウトドア──いわゆるアメリカンカジュアルを代表する要素を内包しながらも、ミニマルなデザインと機能素材によって、都会的で洗練されたムードを漂わせる《nonnative》。TNP代表のサーフェン智氏が1999年に、Tシャツをメインにブランドをスタート。2年後に藤井隆行氏がデザイナーに就任してから今年で24年。長きに渡り《nonnative》らしい芯はそのままに、時代とともに不易流行してきた。そんな《nonnative》の関西初となるオンリーショップが南堀江に誕生。藤井氏にとって、大阪店のオープンは悲願であったという。藤井隆行氏と大阪、そしてnonnativeの現在地を聞いた。
堀江のメインストリート、立花通に位置するセレクトショップ『THE GROUND DEPOT.』の2Fフロア。『the nonnative shop osaka』は、2023年にオープンした東京・中目黒のフラッグシップショップ『the nonnative shop』と同じく、大きな窓から自然光が降り注ぐ、ゆったりとしたスペースに構築。良い意味でクセの強い大阪、そしてミナミの街並みで、nonnnativeの世界観がそのまま表現されている。そんな大阪とは縁深い藤井氏。美術大学への進学のため上京する前は、ミナミエリアに足繁く通ったと言う。
nonnative デザイナー / 藤井隆行
1976年、奈良県生まれ。東京の武蔵野美術大学を中退後、BEAMSやSILASなどの販売を経験し、2001年にブランド設立3年目であったnonativeのデザイナーに就任。「洋服とは、人生を投影するための道具である」という哲学の下、ワークやミリタリー、アウトドアをベースに、現代のスタンダードとも言うべき洋服を生み出している。
アメ村・東心斎橋に通った
藤井隆行の学生時代。
「奈良出身の自分にとって、大阪、特にミナミはすごく馴染みがある街です。地元の最寄り駅から近鉄で30分ほど、と結構近くて、90年代のヴィンテージブームでは、アメ村の『ショウザンビル』とか、もうだいぶ前に無くってしまったけれど『無国籍百貨』など古着屋を巡ったり。それからしばらくして、大阪ではあまり取り扱い店が少なかった記憶がありますが、アンダーカバーやグッドイナフにハマって。東心斎橋に裏原ブランドを扱うセレクトショップがあったので、そこにもよく行っていましたね。いまも現役でアパレルをやってる同級生や先輩も何人かこの周辺にいるので、僕にとっては、大袈裟かもしれませんがホームタウンのような場所。大阪店がオープンする前から頻繁にこっちに来ていますが、当時とは違って覗く店は、ブランド古着屋とかリサイクルショップがメイン(笑)。行けば、なんでも揃ってるのが面白くて」。
ホームタウン・大阪に誕生した
待望のオンリーショップ。
藤井氏にとって、馴染みのある大阪、自身のファッションにおける原点となる地にnonnativeのショップを構えるのは、もしかすると必然だったのかもしれない。そんなきっかけをくれたのが、『THE GROUND DEPOT.』のオーナー・飯田祐士氏だった。THE GROUND DEPOT.で展開していたアウトドアフロアが別のエリアに移転するため、空いた2階スペースを活かす形で実現したという。元々、nonnativeをセレクトしていたTHE GROUND DEPOT.にとっても、これ以上ないスペースとして、『the nonnative shop osaka』は誕生した。
「(飯田)祐士くんにとっても、僕にとっても、すごく良いカタチで大阪店を作ることができたと思います。堀江のメインストリートでnonnativeのショップが出来るなんて、自分自身も想像していなかったことで。フラッグシップがある中目黒は、どちらかというと目がけて足を運んでいただく場所。それとは逆に大阪店は、nonnativeのことを好きでいてくれるひと、名前は知っているけど深くは知らないひとなど、多様な方の目に触れていただけるところです。広さも中目黒とほぼ同じくらいで、ブランドの世界観を存分に表現できるスペース。この大きな窓から、立花通を眺めているだけで、「大阪に帰ってきた」という感情が湧いてきますね」
藤井氏がnonnativeを手掛けてから24年。ブランド初期と現在を比べても、《nonnative》には一貫した空気が流れている。時代の変化に合わせたアップデートを重ねながらも、根底にある美意識は揺るがない。まるで、藤井氏の信念、そのスタイルを表現しているようなムードが漂うその物作り。まさしく一本筋が通っていることを強く感じさせてくれる。
2011年の記憶を今に重ねて。
再び掲げた「STILL DOESN’T MATTER」
「自分は洋服を作るときあまり深く考え込まないタイプで、機能性をとってもデザインをとっても、自分が作ると“そうなってしまう”。デザイナーになってから、ずっとそんな感じでやってきているので、良い意味で変わっていないと思うんですよね。もちろん、その時々の時流によって変化させている部分はありますが、例えば10年前に作ったアイテムと今季のアイテムを合わせても、特段違和感がないと言うか。使う生地やシルエットに関しては、その時々によって違いがありますが、基本的なデザインやディテール、パーツの選定というのはほとんど変わってないと思います。あと、“セットアップ”というのはブランドの大きなキーワード。自分自身、昔からユニフォームのような佇まいが好きで、セットアップというのはずっと大切にしてきたテーマですね。信念というと大袈裟かもしれませんが、自分が思い描く洋服を作り続けている感覚です」。
2025 F/Wコレクションで、シーズンを数えること今季で実に47シーズン目。そしてテーマには2011 F/Wと同じく「STILL DOESN’T MATTER」を掲げる今シーズン。藤井氏は大阪店がオープンすることもあり、14年前に経験した特別な想いを乗せたと言う。
「2011年に東日本大震災が起こったときに、それまであまり意識していなかった洋服に対してのいろんな思いが出てきて。人間に必要な衣食住の部分で、いま自分が洋服を作ることが果たして正解なのか? とか、いまこれを必要とされているのか? という感情が湧いてきて、服を作る、ということに真剣に意味向き合ったような時期で。福島にもnonnativeのディーラーがいますし、事が事なので、自分自身もナーバスになっていた時期ですよね。震災からしばらくして、そのディーラーから「nonnativeを楽しみに来てくれるお客様がどんどんお店に戻ってきてます」と連絡があって。それ聞いてからは、自分が作っているものを待ってくれているひとがいるんだ、と前向きな思いを抱いたんです。そんな思いを込めた2011 F/Wコレクションのテーマが「STILL DOESN’T MATTER」。あのときの想いと、大阪店ができた今年はどこか重なる気がして。当時のコレクションをベースにしながら、今の感覚でアップデートしました。自分の中では、ある意味原点に立ち返るような、特別なシーズンです」
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いわゆる1stタイプをアップデートしたトラッカージャケット。11.5ozのデニム生地を使用。 裏地にはGORE-TEX WINDSTOPPERを採用し、クラシックな佇まいに防風性と透湿性の機能を兼備した。¥90,200
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中目黒のフラッグシップショップと大阪店の限定商品となる、『the nonnative shop』のキャップ¥7,700、Tシャツ¥8,800
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2011年秋冬コレクションでも展開されたノーカラーのモーターサイクルジャケット。ハードな印象のあるライダージャケットも、染色加工を施したコットンドリルを使用することで、独特の風合いに。 RIDER JACKET COTTON DRILL PIGMENT DYE WITH WINDSTOPPER® ¥96,800
藤井氏が当時抱いた特別な想い、そして大阪が誕生することへの楽しみを乗せた今シーズンのnonnative。
立花通を歩けば、窓越しに陽光が差し込み、nonnativeのコレクションが静かに輝いている。その光景こそ、藤井隆行が描き続けてきた“変わらないもの”の象徴である。
the nonnative shop osaka
Address:大阪市西区南堀江1-15-5 2F
Tel : 06-6567-8884
Open:11:00 – 20:00
Holiday : 不定休
公式サイト : https://nonnative.com/
Instagram : @nonnative
Photo / Kengo Yamaguchi
Intervirew & Edit / Masashi Katsuma