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みたて

見立てて輝く、健気な花。

店主の西山さんが、ドクダミの花を小さな器にちょこんと挿して、ぽんと置いた。するとそこに静けさがおりてきて、空気が変わってしまった。

 

「山に花屋の花がなく、花屋には山の花がない。じゃあ花屋って一体何だろう」。花屋で長年働いていた西山さんの純粋な疑問だった。花屋で並ぶ花は品種改良されているものがほとんどで、オーガニックはない。花は自然のもの。「植物を扱っていると、今の形でしかありえなかった」と話す。

市場には行かず、野草好きの個人から入手する。「自分が欲しい花ではなく、その人が思う花が届く。ただの花好きの純粋さがおもしろく、彼らとの関係を気に入っています」と微笑む。店頭は、その日によってラインナップも量も変わる。「天気のせいで届かないときもあるし、冬なんて本当に何もない。でも無いことを知るのは僕たちの強みで、豊かさです」。

竹の根の部分を使った茶道具、太鼓舟を現代風にアレンジした花器に、ヤマブキの花を挿して。花器は掛けても楽しめる。¥27,500

アートのように、自由な感性で。

魅力は、美しく活けられた姿にある。アンティークとモダンを生き来する花器と合わせると、山に咲く小さな花が茶室のアートになる。しかも、花を愛する西山さんの手にかかれば、山のつんとした空気までまとう。その感性を知る各方面から、ギャラリーや個人宅での「しつらえ」(出張)の依頼も多い。

 

毎月おまかせ便なども人気で、店頭で買える切り花は400~3,000円(花器付きで1万円から)、苗は1,000円前後。いわゆる花束とは違う「花を束ねたもの」のオーダーもOKで、特別な贈り物になるはずだ。まずは花屋の概念を打ち砕く空間を、目で見て確かめて。

お店の中央にある畳の間では、花にまつわる書籍や花器、ハサミ、露打ち(霧吹き)などの道具も販売する

江戸時代の灯花器に、紫蘭と香丁木をしつらえたもの¥22,000。店内にディスプレイされた花器は花とセットで購入できる

Text : Mio Wajima

Photo&Edit : Yuji Iwai

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