店主の西山さんが、ドクダミの花を小さな器にちょこんと挿して、ぽんと置いた。するとそこに静けさがおりてきて、空気が変わってしまった。
「山に花屋の花がなく、花屋には山の花がない。じゃあ花屋って一体何だろう」。花屋で長年働いていた西山さんの純粋な疑問だった。花屋で並ぶ花は品種改良されているものがほとんどで、オーガニックはない。花は自然のもの。「植物を扱っていると、今の形でしかありえなかった」と話す。
市場には行かず、野草好きの個人から入手する。「自分が欲しい花ではなく、その人が思う花が届く。ただの花好きの純粋さがおもしろく、彼らとの関係を気に入っています」と微笑む。店頭は、その日によってラインナップも量も変わる。「天気のせいで届かないときもあるし、冬なんて本当に何もない。でも無いことを知るのは僕たちの強みで、豊かさです」。