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Styling Space by HS

民藝を慈しむ。

「民藝の精神こそが人生の道標」と開眼し、自分たちらしくモノを選び並べるショップ〈HS〉を営む林さん夫婦。大阪で〈HS〉を始めたのは11年ほど前。作家に触れているうちに、民藝はもっと自由に表現できると考えはじめ、奈良の地にぽつんと小さなスペースを作った。選りすぐりの陶芸作品や生活道具が並ぶだけでなく、民藝、茶の湯、アートの三者がMIXする新しい空間だ。真っ白な展示販売スペースに対し、茶室は黒。「対照的にすることで、本当に美しいものはどこにあっても素敵なんだということを再確認できました」と林さん。

 

「自分たちがやりたいペースで、やりたいことを」と開催する、不定期の特別展もぜひ訪れてみてほしい。取材した日は、茶室で陶芸家・石井直人さんと現代アートの堀尾貞治さんの作品を同じ空間で見ることができた。

  • ガジュマルやアカギなど沖縄産の素材も取り入れ制作する沖縄の木工作家、藤本健さんの錆漆鉢(高杯)¥26,400

登り窯で焼き上げられる石井直人さんの作品。ふたつとして同じものがなく、曲線のいびつさは味わいになる。マグカップ¥11,000

  • タナカシゲオさんの白釉皿。シンプルでありながら、狙っても出せないような絶妙なカーブを描く。柔らかさを感じる作品

  • 薪窯のうつわらしい素朴な風合いと手描きのモチーフが特徴的な石井直人さんの焼〆鉢¥5,500。料理を盛り付けるのも楽しい

心綻ぶ余白の時間。

ハシゴをのぼると、夕陽を眺めるスペース「夕月山窓」がある。イスと本、壺だけが置いてあって、気持ちの良い光に包まれている。窓を眺めれば、忙しい日々が一度止まるような感覚になるかもしれない。茶室も、展示スペースも、2階も、余白がたっぷり取られているから、ここでは時間がゆっくりと流れている。林さんは、欠けや歪みも美しいと思える心は、とても日本的であり、茶の湯の民藝の本質も似ているはずだという。余白は、普段なら見過ごしそうな石の曲線や、光がつくる影にも気付かせてくれる。

夕陽を眺められる2階スペース「夕月山窓」では、時々展示も開催する。たっぷりと取られた余白に、天窓から入る自然光が心地いい

  • 茶室であり、展示室でもある現代の茶室「元ノ庵」。墨汁で塗り、吸い込まれるような黒に。立礼式であること、さらに照明もつけてより現代的にしている

  • この日は京丹波の陶芸家、石井直人さんの特別展が開催中。茶室では、現代アーティストの堀尾貞治さんの作品と並べて展示

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