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汽[ki:]

ようこそ、レバノンのまるい食卓へ。

朝8時からオープンしているレストランがある。しかも、レバノン料理だという。聞き慣れぬファラフェルなるものや真っ黒のピタパン…。聞いても見ても、不思議ばかり。席に着いて口にすると、天窓からの明るい光にすべてのハテナがまるく包まれて、すとんと落ちるものがあった。

 

ひよこ豆で作る香ばしいファラフェルやシャワルマ(お肉の串焼きをマリネにしたもの)、スパイスの効いたフムス(ペースト)、フレッシュなハーブ、マリネ…。多彩な味と食感を、ピタパンの袋に好きに詰め込んで一緒に食べると、なんとも幸せな調和が生まれる。いろんな宗教の人、ベジタリアンやビーガン、食の意識が違うみんなが、同じひとつのテーブルで食事をする。それがレバノン料理だという。ここ〈汽〉にも、テーブルはひとつしかない。

 

「ビーガンやベジタリアンの人とお肉を食べたい人が食事をするとき、多くの場合がどちらかが我慢しなければいけない。そういうのがなく、どの人も一緒に気兼ねなく食事ができる。そういうカルチャーを作りたいと思いました」。と、オーナーシェフの長野さん。16歳からフレンチの世界で経験を積んできたとあって、洗練された見た目と味わいも、人気の理由だ。

ランチメニューのチキンとファラフェルミックス¥2,500。フレンチの感性で仕上げた大豆ベースのアイオリソース、トマトのフムスもアクセント

テーブルは店内の奥にひとつだけ。梁がむき出しになった天井から優しい自然光が入り、開放的な空気が漂っている

京都歩きの出発点。

「1日のはじまりがよければ1日が有益になる」。世界中をまわってきた長野さんが台湾での体験で得たアイデアだ。だから朝から、おいしい食事の時間を提供する。来る人すべてが同じ席だから、自然と隣の席の人と会話が生まれることも多い。意気投合して、次へ!と一緒に店を後にする人もいるという。モーニングは20組限定で、予約制。シャワルマが食べられるランチもおすすめだ。

 

世界の国から人が集まる京都での1日に、幸せのレバノン料理を。

使う野菜は8年前から自家栽培しているもの。使えない野菜を店内の薪窯で炭化して生地に混ぜ、黒いピタパンにエコなメッセージを込めた

甘さの中にほのかなスパイスを効かせて飲みやすく仕上げた、パイナップル+新生姜+カルダモンのコーディアル¥600。アルコールも同様に朝から提供する

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