〈ジェイエムウエストン〉の靴には、フランス人が愛する価値観と歩んできたカルチャーが詰まっている。1891年に革なめしと革加工の工場からスタートしたシューズ銘柄〈ジェイエムウエストン〉。狩猟、ゴルフ、乗馬など紳士の屋外スポーツから生まれたモデルの中でも、シンボルとも言えるのがローファーだ。おもしろいのは、この靴を一躍世に広めたのは1960年代、シャンゼリゼ通りのドラッグストアでたむろしていた通称「ドラッグストアギャング」たちだという。ジーンズに素足で父親のローファーを合わせて社会に反抗した若者のカウンターカルチャーは、フランスに刻まれる文化となった。
ドレスとカジュアル。芸術的で実用的。スウェードにはボックスカーフ。フランスには、異なるもの、相反するものをスタイリングするバランス感覚がある。パリは伝統と革新を繰り返してきた。だから豊かで美しい。イタリアの靴、アメリカの靴ともどこか違う、この靴には、優雅さがある。