バー? いいえ、ここはヴィンテージメガネショップ〈スピークイージー〉。どこまでも深みにはまってしまいそうな落ち着いた照明に、グラスのように煌々と輝くメガネたち。ほとんどが、現在メガネデザインの源流ともなる、40~50年代のフランスのものだ。
もぐり酒場さながら、インターネットには流れていない刺激的な話がここには潜んでいる。情報源は、オーナーの山村さん。若くしてフランスヴィンテージというジャンルが誕生するはるか前からこれらのメガネに注目するパイオニアだ。
「メガネがファッションじゃなかった時代に、この豊富さ。プロダクトへの美の探求心。何より、身につけた時かっこいい」。アメリカものもいいけれど、日本人が着けるとどうしてもデザインに負けてしまう。フランスのメガネには、人に寄り添った工夫がなされているという。「フランスものの世界にはブランドがない。モノの良さだけで価値が決まるなんて、ピュアな話じゃないですか。マニアックでもあるけど、それだけに、自分の個性でつけられる自由さがあります」。