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THE BOOK END

本は人生の栞。

本はいつだって平等だ。いつ誰が見ても同じ厚さ、同じ構成。しかし、それを見るひとがどう捉えるか、どう感情を揺さぶられるかが本の持つ大きな力である。ページを捲る高揚感、感動したこと、そしてその出会いが人生の“痕跡”とも言える。

 

東京・学芸大学駅近くのブックスタジオ『BOOK AND SONS』の姉妹店としてオープンした『THE BOOK END』は、国の登録有形文化財にも指定される神戸・海岸ビルヂングをロケーションに選んだ。タイポグラフィやデザイン書を中心に選書する『BOOK AND SONS』とは異なり、写真集とアートブックに特化したセレクションで、国内外の著名な作家の写真集はもちろん海外の版元から直接仕入れた本も多数。そして海がほど近く、歴史的な建物で過ごす本との時間に、心地よい緊張感すら漂う。この美しい空間で、きっと記憶に残る一冊に出会えることだろう。

 

 

 

 

 

イギリス人フォトグラファー“Paul Graham”の作品集。1986年に刊行された作品集の再販を含め、3部作となっている

  • バルセロナを拠点に活動する写真家、Denisse Ariana Pérezによる初の写真集“AGUA” ¥8,910

  • イギリスの写真家であり、映画監督かつビジュアルアーティスト Laura McCluskeyの写真集“Blue Above” ¥5,500

  • スペインの写真家、PACO POYATOの写真集“FRENCH FRIES” ¥3,300。スペインの出版社carmencitaより直輸入のため、他店ではなかなか目にすることができない

紙と対峙すること。

店内の約半分を占めるギャラリースペースでは、これまで川内倫子氏、横浪 修氏、若木信吾氏など日本を代表する作家の展示・トークショーを開催してきた。東京『BOOK AND SONS』からの巡回展に加え、気鋭の若手アーティストや神戸ならではの展示も予定しているとあり、その続報も楽しみだ。

 

また、2012年にスペイン・バレンシアで誕生したフィルムラボ「CARMENCITA Film Lab」と提携したフィルムスキャンサービスも実施。写真家による写真家のためのラボだけあり、その仕上がりに数々の作家たちを魅了する。

 

デジタルで見る写真と、紙で見る写真。それが同じ写真だとしても、圧倒的に何かが違う。生々しさ、温度、匂いなどひと口では形容しがたいものがある。『THE BOOK END』は、記憶にも心に残るのも紙であるということを教えてくれているようだ。

 

取材時は若木信吾氏の写真展を開催。南側の大きな窓から入る優しい光がギャラリースペースを照らす

  • コペンハーゲンのブランド〈CACHÉ〉のブックエンド¥42,900。石灰岩を削り出して作られており、ずっしりとした重量感に。ブックエンドのほかオブジェとしても存在感を放つ

  • オープンを記念した『THE BOOK END』オリジナルペン ¥220

Photo / Yuji Iwai

Text / Masashi Katsuma

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