Feature 6

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【連載 第一回】「前進する西の食」 by 松尾修平(Meets Regional 編集長)
“波乗りのごとく軽やかに、ワイン文化をつくる人”。

  • Update :

    Apr 22, 2022

盛り上がる関西ワイン・シーンの顔役。

 昨年、僕のかかわる雑誌でナチュラルワインを特集した。関西中心の販売だったにもかかわらず、日本全国~老若男女問わず予想以上の反響で、昨今の人々の食への関心の高まりを、身をもって知ることができてうれしくなった。ステイホームの功名? コロナ禍だって悪いことばかりじゃない。

 

 その特集を作る上で、昨今のワイン事情を聞くべくまず顔が浮かんだのが、『FUJIMARU WINE SHOP』の代表・藤丸智史さんだ。だから上述の特集には、藤丸さんから伺ったシーンの流れや昨今のブーム、押さえておくべき店など、現場の話が存分に反映されている。

 

 まずは、藤丸さんの経歴をご紹介。大学卒業後、ホテル〜レストランのサービスマンとして勤務し、20代で海外へ。ヨーロッパにて3カ月、オセアニアにて2年、現地のワイナリーでワイン造りを経験。当時、サービスマンがワイナリーで働くのは異例中の異例だったそうだ。29歳で帰国後にワインショップを開店した後、日本初の都市型ワイナリー『島之内フジマル醸造所』を設立、日本のワイン・カルチャーを最前線で引っ張ってきたひとりだ。こうやってその足跡を書き連ねれば、超やり手の実業家…なんだけど、いざ実際にお会いすると、声のトーンも話すスピードものほほんとしていて、いつもズッコケそうになる…といったら藤丸さんに怒られるかな。とにかく、そんなマイペースな人柄だから、今回も真っ先に電話したのだ。「ナチュラルワイン特集? いいですね。久しぶりだし、どこかでワイン飲みながら話します? 明日どうですか?」。めちゃくちゃ忙しいはずなのに、このカジュアルさも僕が好きなところだ。で、久々にお会いした藤丸さんだけど……めちゃくちゃ日に焼けてません?

  • ワインを醸造する器材は、八尾市の町工場に特注したオリジナルと、メイドイン大阪にこだわる。ほか、工場内にはワイン発祥の地と言われるジョージアより空輸したクヴェリ(素焼き窯)も。

  • 1階にワイナリーを構えるレストラン[島之内フジマル醸造所]では、階下の工場直送の生樽のワインが楽しめる。レストランの吹き抜けから見えるワイン工場の風景も、ワインのおいしいアテ

  • (左)自社畑で育てたデラウェアのみを使った島之内フジマル醸造所「キュベパピーユ 大阪 White 2020」¥3,470。(右)素焼き甕で約11カ月熟成させた「FUJIMARU」のフラッグシップとなるオレンジワイン「キュベパピーユ デラウェア甕仕込み 2020」¥3,770

日焼けの理由は、予想外だった。

「15年振りにサーフィンを復活したんですよ」。藤丸さんと知り合って10年以上になるけど、サーフィンが趣味だったとは初耳だ。「もともと、学生時代からサーフィンとワインが趣味だったんです。就職してめちゃくちゃ忙しくなって、両方を続けるのは難しい…で、25歳の正月にワインでいこうと決めたんです。以来約15年間、海にも行ってませんでした」。

 

 いつもマイペースな藤丸さんだから、そんな覚悟でワインと向き合われていたとは正直驚いたけど、“サーフィン”というキーワードはなんだかしっくりきたのだ。というのも、僕が知り合った約10年の間にも、ワインショップオーナーからブドウ農家、そしてワイン醸造者へと型破りな転身をされてきたのを間近で見てきた。最近では「人の縁で」と、愛媛の焼酎蔵で焼酎造りを始めたり、「ワイン造りでできたブドウの絞りかすを有効利用したい」とウニの養殖やブランデー造りに挑戦したり。宮崎・日向市には、「二度とやりたくないけど、自分の住みたかった家を作ってみたかった」と、デザイナーを入れず自ら施工会社とやりとりしてトレーラーハウス宿泊施設をオープンさせてしまった。その歩みを例えるなら、まさに波乗りではないか。「根っこは、ワインの消費量を増やしたい。そのためにいつもどうしようかな…と悩んでいると、何か話があったときにすぐアクションできるし、どんなことでもできるだけ話を聞くようにしてます。最初からNOということはあんまりないですね。とりあえずやってみるんです」。

 

 と、そこまで藤丸さんを魅了したワインの魅力って?「いろいろありますけど……カッコ良かったんですね。ワインを飲むことも好きですけど、ワインという正解がないものに対して、その魅力を伝え喜んでもらおうと働いている人たちがカッコ良くて、好きなんでしょうね」。

 

 ナチュラルワインの不思議なところは、すーっと喉に染み込むような飲み心地の良さ。そこには藤丸さんのような、作り手や携わる人のナマの想いまでがギュッと詰まっているのだろう。あぁ、「FUJIMARU」のキュヴェが飲みたくなってきた。

島之内フジマル醸造所

大阪府大阪市中央区島之内1-1-14 三和ビル2F

TEL : 06-4704-6666

OPEN : 12:00-23:00(21:30LO)

HOLIDAY : 火曜・水曜

URL : https://www.papilles.net/

INSTAGRAM : @shimanouchi_fujimaru

松尾修平

大阪が誇る名物雑誌『Meets Regional』の編集長。常に街場に身を置き、関西の様々なネタを独自の目線で切り取る現場主義の編集者。

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