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“TASF Tackle Mart”

大阪のエンターテイナー
<THEモンゴリアンチョップス>が手掛けた
次の一手は“釣具店”!?

  • Update :

    Jun 20, 2022

ディープ大阪に突然出現した本気の釣具店。

舞台は“なにわのシンボル”として名高い通天閣が中心となった新世界。ド派手な看板が乱立する街ではパンチの効いた御仁が闊歩し、昼夜を問わずビール片手に串カツを頬張る人たちが見て取れる。大阪のステレオタイプが今も色濃く残るこの場所で唯一、ファッションブランドを展開しているのが<THEモンゴリアンチョップス>。ホームタウンに負けないディープインパクトな世界観があり、地元関西だけでなく全国にフォロワーを増やし続けている。

 

そんな同ブランドの指揮を取るのが安藤仁彦さんと山本健太さん。2013年の立ち上げから一貫している指標は、“おもろいやん!”と思ったことを突き詰める初期衝動。<THEモンゴリアンチョップス>を皮切りに、彼らの活動指針をTシャツなどに落とし込む<ボクハタノシイ®︎>、2人のライフワークになっている“釣り”にフォーカスした<タスフ>という3レーベルを展開している。

 

その中でも“超釣支援道具”を意味するTOOL ASSIST SUPER FISHINGの頭文字を冠した<タスフ>の釣具店『タスフ タックル マート』が、<THEモンゴリアンチョップス>の直営ショップから徒歩1分の場所にオープンしたと聞いて足を運んだ。一歩足を踏み入れると圧巻。40代オーバーには懐かしく、20代には新鮮に感じられるオールドルアーの数々が壁一面に敷き詰められていた。

長年の想いと半年の構想を経てついにオープン。

2人がバスフィッシングを始めたのは小学生のとき。一時期は止めていたものの、共通の趣味としてブランドを始めた頃に再び釣りを始めたそう。釣りに対する醍醐味を聞いたところ「ブラックバスの動きを予想しながら釣りをする、とても頭を使う遊びなんですよね。ただ糸を垂らしたら終わりじゃなく。バスと釣り具の両者がガチッとハマったときは最高ですね」と山本さんが言えば、「釣る度に足がガクガクするほど興奮するんです」と安藤さん。コロナ禍で<THEモンゴリアンチョップス>の直営店『TMCフレンドリーショップ』を2ヶ月ほど閉めた時期から淀川へ週イチのペースで通うようになり、2人の脳内が釣り一色に。そこから新店の『タスフ タックル マート』の構想がスタートした。

 

安藤さんは「当初は釣り人が多い淀川の城北あたりで物件を探していたんですが、逆に考えると、釣り好きが観光で新世界に来た時に『たまたま通りかかったら釣具屋があった』となったら必ず入ってくれるんじゃいかと考えを変えるようになって」と語れば、山本さんは「一時期、コロナで新世界に人がいなくなったんです。ただ何も行動を起こさないとジリ貧になってしまうので、僕らの好きな釣りに賭けてみたんです」と話してくれた。

 

新店はおよそ半年の構想を経て2022年4月にオープン。肝心のラインナップについて2人に話を聞くと“おもしろければ何でもアリ”という関西人特有のノリだけじゃない、彼ら独自の哲学が隅々まで行き届いていた。

  • (左)安藤仁彦さん、(右)山本健太さん。THEモンゴリアンチョップスのデザイナーであり同ショップの仕掛け人。安藤さんはバス釣り用のバイクを物色中で、山本さんは次の釣りで使うリールをメンテナンス中

バスフィッシング旺盛期の古き良きルアー。

「バスフィッシングのお店って、リーバイス501XXのようにショーケースに入れてルアーを飾る店と、リサイクルショップのようなテンションで数百円のルアーを山積みしている店の両極端なんです」と安藤さん。「安藤が言うように新品の釣具店を除けば、洋服業界で例えると一番店舗数が多いであろう古着屋みたいな店がないんですよ」と語る山本さん。彼らが目指す釣具店はアパレルの世界で例えると、アメ村や堀江で当たり前にあるようなUSEDショップ。気軽に入れる古着屋のように、『タスフ タックル マート』ではすべてのアイテムが実際に手に触れられるのだけど、釣具店においては希少なんだそう。しかも整然と並べられたルアーは、1990年代をメインに、1980年代から2000年代のものがベース。ちょうど2人が若かりし頃に釣りを楽しんでいた頃のモデルが揃っている。「古いものだと40年くらい経つのでヴィンテージと謳っていいんですが、業界内では認められていない存在なんで。そこを底上げしたいなと思って」と山本さん。一方の安藤さんは「その頃って“バスバブル”と呼ばれていて、業界内が盛り上がっていたんです。今では手間が掛かり過ぎて作れなかったり、デザインが効いたファンシーな一点物があったりと、当時の勢いが感じられるんです」と語ってくれた。日本全国を駆け巡って集められたルアーは丁寧に磨き上げられ、新品の針を装着して販売。フィールドで即戦力として活躍してくれる。そのルアーの脇を固めるようにして<タスフ>のオリジナルワームがラックを彩り、同じ釣りを趣味に持つ古着屋のオーナーが買い付けたアメリカのフィッシングウエア、釣りYouTuberがデザインするTシャツも混在。バスフィッシングを媒介とした、日本でも恐らくここだけであろうセレクトショップを作り上げた。

1990年代のユーズドが中心となったタックルボックスも販売。開くと今はない3段スタイルの収納スペースがあり、前所有者が貼っていたステッカーもあえてそのままに

目指すはバス釣りの本場アメリカ。

安藤さんが「新しいことを始めてバッシングを受けるリスクより、行動を起こすことが勝ち」と言うと、「誰よりも先にやりたいのが基準。他人にやられたら悔しいじゃないですか」と山本さん。白い歯を覗かせながら話す2人はすでに海外へと目を向けている。「ブラックバスの本場・アメリカでは、おじいちゃんのタックルを使って釣りをするのが文化みたいなんです。日本のヴィンテージルアーを持って行き、逆輸入というカタチで海外で評価されると、日本人のバス釣りに対する視点が変わるんじゃないか」と山本さん。安藤さんは「今まで自分が持っていた古いルアーに価値があると知ったら、『これで釣りやってみよう』って意欲が出ると思うんです」。そんな彼らの奥底にあるフィロソフィを聞くと、愛でるように飾られたルアーが生き生きとした表情に見えてくるから不思議なものだ。一つひとつを事細かく説明してくれる接客スタイルも相まって、現代のオンラインショップでの買い物では味わえない高揚感に浸ることができる。さらに2人が揃って言うのは「バス釣りはロマン。略してバスロマンなんです(笑)」。その言葉を紐解くと、バス釣りはまだ見ぬ恋人との一期一会を楽しむようなスポーツなのかも。サカナとの駆け引きに使うルアーはいわばラブレター。それだけに『タスフ タックル マート』に並ぶ思い入れのある道具を使うだけで、よりバス釣りが楽しくなり、いつしかライフスタイルに欠かせない遊びになってくれそう。夢とロマンが足りていない時代、自然と遊ぶ釣りの世界へ、この店がゲートを開けてくれるのかも。

  • 極限までバスの形状に近づけたタスフ×マスターピースのBASS POUCH ¥6,160。ヒレ部分には上質なレザーを配置

  • “アメリカから見た日本”をイメージして、手裏剣モチーフの刺繍を施したタスフのNINJA LURE’S各¥4,950

  • タスフのBASS NUDE Tee ¥4,950。魚体と女体と並べたデザインは日本の春画がイメージで、着るほどに風合いの出るシルクスクリーンでプリント

  • YouTuberのNCC西日本TVが手掛ける、むずのしいTシャツ¥4,400。淀川での釣りを表現したという“難しい”と“楽しい”を組み合わせた造語をレタード

  • タスフのYODOGAWA WINNER ¥880。初心者でも使えるよう、ブルーベリーの香りと愛らしい形状に仕上げたオリジナルワーム

  • デッドストックの型を使ったバスのジッパープルが印象的なタスフのFISH SHIRTS ¥18,700。釣りで役立つ撥水ナイロンを採用

タスフのキーホルダー¥2,200〜。サステナブルの考えから役目を果たしたルアーが再利用され、ロゴ入りのオリジナルフックを取り付けて高級感を演出

Text : Shohei Kuroda

Photo&Edit : Yuji Iwai

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